思春期に起こった健康上の問題は中高年の健康や生活の質にも影響をおよぼします。日常の外来診察をしていて多くみられる症状は、月経が不順であるとか周期が非常に長いといった月経の異常です。これらは10代の頃から続いている方もいれば、仕事をはじめてから症状がみられる方など様々です。一般的にはホルモンのバランスがよくないという言い方をするのですが、体の中で起こっているその病態は複雑です。月経の異常の原因をいくつかあげてみます。
1)下垂体性無月経
卵巣の働きは卵胞ホルモンや黄体ホルモンなどを産生することと、排卵(成熟した卵子を作り出す)させることですが。卵巣は下垂体(脳の一部)から出ているFSH、LHという2つのホルモンの作用をうけて働いています。このFSHとLHが正しく分泌されないと卵巣は正しく働かないことになります。FSH、LHが極端に低く月経がうまく起こらないケースを下垂体性無月経といいます。原因は過度のストレスや極端な体重減少があげられますが、原因が不明なことも多いです。
2)多嚢胞性卵巣症候群
体の中のアンドロゲン(男性ホルモン)の数値が通常の女性より高くなることでホルモンバランスが悪くなり、排卵障害を起こす疾患です。ホルモン検査をすると下垂体ホルモンでのLHがFSHより高値をとること、超音波診断装置で卵巣内に小さな嚢胞(排卵に至らない卵胞)が多数みられることで診断ができます。
月経の異常があった時に行うべき検査には次のものがあげられます。
1)超音波診断装置による子宮や卵巣の検査
2)月経中の採血によるホルモン検査
3)基礎体温表をつけること
4)子宮頸部の細胞検査
月経異常の対処法は年齢や生活の状況によっても異なります。
1)未婚かあるいはすぐに妊娠を希望しない場合
ホルモン剤(低用量ピルも含む)による治療を行うか経過を観察していく。
2)既婚で妊娠をすぐに望む場合
月経異常が不妊の原因になっているかどうかの判断が必要です。基礎体温をつけてそれを参考にしながら排卵誘発剤を使用していきます。
月経の異常という体質を大きく改善させることは難しいです。ただ常にご自身の月経の状態を把握して治療が必要な場合にはきちんとうけていただくことが、妊娠を考えた体を作る上では大事なことだと思います。